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【書評・要約】「オレたちバブル入行組」 池井戸潤 著


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「オレたちバブル入行組」

 

 

本書の紹介

【基本情報】

題名:「オレたちバブル入行組」

著者:池井戸 潤

頁数:368p

出版社:文藝春秋

発売日:2007/12/6

 

【あらすじ】※本書裏表紙より

大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。すべての責任を押しつけようと暗躍する支店長。四面楚歌の半沢には債権回収しかない。夢多かりし新人時代は去り、気がつけば辛い中間管理職。そんな世代へエールを送る痛快エンタメ。

 

本書を読んでの感想等

以下、多少のネタバレを含むため注意。

 

本書は、2013年7月から約3か月間にわたって放送され、その年の流行語大賞にもなった「倍返し」のフレーズでもおなじみの大人気ドラマ『半沢直樹』のベースとなった小説である。(続編の「オレたち花のバブル組」も同様である。)

 

物語の舞台は銀行である。主人公は、東京中央銀行大阪西支店で融資課長をしている半沢直樹である。

 

ある日、支店長の浅野が西大阪スチールという会社に5億円もの融資を通そうとする。西大阪スチール社長の東田と会った半沢は、5億円もの融資をするに値する会社とは到底思えなかった。半沢は融資に反対するも、支店長が強引に融資を通してしまう。すると、ほどなく西大阪スチールは倒産。融資した5億円の回収は絶望的な状況になってしまった。するとあろうことか、支店長はすべての責任は融資課長である半沢にあると言い始め、東京中央銀行本店を巻き込んだ根回しを始める。このままでは半沢の立場が危ない・・・。

 

納得できないながらも5億円の回収に動きだす半沢。しかし、債権回収できれば問題は解決するはずなのに、なぜか支店長の暗躍によって銀行内部の人間から様々な妨害を受ける。部下や同期の協力を得ることで様々な妨害を乗り越えつつ、今回の件で被害にあった竹下金属(西大阪スチールの下請け)の社長とともに、西大阪スチール社長の東田と激しく火花を散らす。そしてその過程で、なぜ支店長が5億円もの融資を強行したのか、なぜ債権回収という問題解決に向かうのではなく、半沢に責任を押しつける方向に持っていこうとするのかが明らかになっていく。

 

半沢が真実に迫り、物語の終盤になると、半沢に追い詰められる支店長の視点の話が多くなってくる。

順調にエリート街道を歩いてきた男だが、一つの誤算から人生の綻びが生じた。その綻びを修復しようとした結果の不正。不正を隠すための犠牲を伴う工作。すべてはうまくいくはずだった。それがなぜ・・・。

そして最初は大部分を占めていた半沢に対する怒りの感情も、家族と過ごす中で後悔に変わっていく。魔が差した。許してほしい。どうか家族の幸せだけは・・・。

半沢の追い詰め方もさることながら、支店長の不安や後悔の描写を読んでいると、胸が締め付けられる感覚になる。西大阪スチールの東田社長との決着もスカッとするが、個人的には支店長との決着がとても印象的であった。

 

冒頭でも述べたように、この小説をベースに作られたのがドラマ『半沢直樹』であり、細かな違いはあれど、内容はほぼ忠実に再現されているが、一つ明らかに異なる部分があった。それは、半沢の妻・花である。

ドラマでは「気は強いが夫を気遣う良い妻」として登場するが、原作の小説では、様々なトラブルに巻き込まれている半沢の大変さを理解しない「マイペース過ぎる妻」として登場する。悪く捉えたら「自分勝手」とも取れる発言もあり、他の登場人物の妻が対極であるため、半沢が余計に不憫に見えてしまうのである。

 

さて、簡単に感想等を述べてみた。

この物語はシリーズ第1作であり、第2作の「オレたち花のバブル組」に繋がっていくが、それぞれ1冊ずつで一つの事件が解決する。まずは1冊読んでみてはいかがだろうか。きっと気に入っていただけると思う。

また、今後第2作以降の感想等も残したいと考えているので、その際は読んでいただけたら幸いである。以上。

 
第2作の記事はこちらです。