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【書評・要約】「オレたち花のバブル組」(文庫版) 池井戸潤 著


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「オレたち花のバブル組」

 

 

本書の紹介

【基本情報】

題名:「オレたち花のバブル組」

著者:池井戸 潤

頁数:368p

出版社:文藝春秋

発売日:2010/12/10

 

【あらすじ】※本書裏表紙より

「バブル入社組」世代の苦悩と闘いを鮮やかに描く。巨額損失を出した一族経営の老舗ホテルの再建を押し付けられた、東京中央銀行半沢直樹。会社内の見えざる敵の暗躍、金融庁の「最強のボスキャラ」との対決、出向先での執拗ないじめ。四面楚歌の状況で、絶対に負けられない半沢と仲間たちは反撃を狙う!

 

本書を読んでの感想等

以下、多少のネタバレを含むため注意。

 

本書は前作の「オレたちバブル入行組」に続くシリーズ第2作で、第1作同様、大人気ドラマ『半沢直樹』のベースとなった小説である。

 

東京中央銀行に勤める主人公の半沢は、第1作の結末を受け、本店営業第2部の次長職に就いている。

 

ある日、大事件が起きる。

東京中央銀行が200億円もの融資をしたばかりの伊勢島ホテルが、120億円もの損失を出した。このままでは先々の融資の回収はおぼつかない。ライバルの白水銀行も伊勢島ホテルの取引銀行だが、白水銀行はその損失を事前に察知して融資を回避しているため、東京中央銀行与信判断が余計に問題視される状況である。さらに悪いことに、このタイミングでもうすぐ金融庁検査も入ることになっている。金融庁検査の中で融資の回収に問題のある取引先と判断されれば、その取引先の倒産に備えた多額の引当金を計上する必要があり、銀行の業績に大きな影響を与えるとともに、頭取の進退問題にまで発展するのである。

この緊急事態に、半沢に白羽の矢が立った。本来、伊勢島ホテルは法人部の担当だが、頭取命令によって半沢が担当に指名されたのである。社運を賭けた半沢の戦いが始まる・・・!

 

一方、半沢の同期には、かつて心の病を患ってしまったことで、中堅電機メーカーのタミヤ電機に出向させられた近藤という男がいる。近藤は、タミヤ電機の社長や社員から仲間とみなされずに「銀行さん」と馬鹿にされ、古巣の東京中央銀行タミヤ電機担当者からは嫌がらせにより融資を受けられず、辛い日々を過ごしている。

そんなある日、タミヤ電機の経理資料を見ていた近藤は内容に違和感を覚えた。タミヤ電機には何か大きな闇がある・・・!近藤は、長い間忘れていた闘争心やプライドを徐々に取り戻し、タミヤ電機を変えるべく戦うことを決めたのである。

 

別々に進むように見える半沢と近藤の話は、物語が進むにつれて関係してくる。

東京中央銀行京橋支店の古里は、伊勢島ホテルが多額の損失を出した件、タミヤ電機に潜む闇の件、どちらについても関係していたのである。そして古里を取っ掛かりとして、二つの件の真相を探っていくと、どちらも首謀者は東京中央銀行の大和田常務であった。真相を暴こうとする半沢と近藤に対し、大和田常務とその手下(部下)は、様々な手段で潰しにかかるのである。

 

この時の近藤がとても人間的である。様々な嫌がらせには負けることなく、タミヤ電機の闇の真相に迫った近藤だが、半沢を裏切って大和田常務に協力すれば、大和田常務の力によって銀行に戻してやる、という誘惑に負けたのである。片道切符の出向でタミヤ電機に出されたため、普通ならば二度と銀行に戻れないはずが、戻れるチャンスが目の前にある。しかも部署の希望まで叶えてもらえるという。さらに近藤には守るべき妻や子どももいる・・・。ここで誘惑に勝つのがヒーローなのかもしれないが、実際のほとんどの人間はそうはいかないのではないか。自分が近藤の立場でも同じように負けていただろうと思う。とても考えさせられる内容であった。

 

また、金融庁検査という大問題も同時に進んでいく。オネエ口調で話す金融庁の黒崎主任検査官は、過去にとある銀行を破綻に追い込んだことがあるほど、厳しい検査をすることで有名である。今回の検査の結果により、頭取を引きずり降ろそうという下心を持つ大和田常務の妨害をも受けながら、厳しい検査に立ち向かう半沢。検査を乗り切るため、伊勢島ホテルの湯浅社長に痛みを伴う抜本的な改革を迫ることになる。黒崎の執念深さと湯浅社長の葛藤する姿に注目してほしい。

 

そして、最後は半沢が取締役会に出席し、そこで大和田常務との決着がつくわけだが、その迫力は目を見張るものがある。詳細は述べないが、ここでは岸川部長が大きな役割を果たす(自主的にではなく、半沢に追い込まれてだが)。大和田、岸川を追い込む半沢のやり取りは鬼気迫るものがり、文字を読んでいるだけなのに私自身にも緊張が走ったのを覚えている。

 

さて、簡単に感想等を述べてきた。

もちろん、これだけの文章では、本書のほとんどの内容には触れることができていない。というか、私の稚拙な文章では、細かく紹介すると作品のイメージを損ねかねないため、あえてザクっと紹介するようにしている面もある。この記事を読み、少しでも面白そうだと感じた場合には、ぜひ読んでみてほしい。本物はそのはるか上をいく面白さであるからだ。

今回の記事については以上。また別の記事でもお会いできれば幸いである。

 
第1作の記事はこちらです。