【書評・要約】『東大卒プロゲーマー』 ときど 著
スポンサーリンク
『東大卒プロゲーマー』
本書の紹介
【基本情報】
題名:東大卒プロゲーマー
著者:ときど
頁数:224p
出版社:株式会社PHP研究所
発売日:2014/7/29
【概要】※本書カバーのそで部分より
本書は、道なき道を選び続ける若きプロフェッショナルが赤裸々に綴った、自省と開眼の書である。ゲームと勉強をリンクさせて東大に合格、バイオマテリアル研究における成果が国際学会で評価されるほどの人物は、なぜエリートコースを捨て、未開の地ともいえるプロゲーマーの世界に進んだのか。さらに彼はプロ入り後、順調に勝ち星を増やしていたにもかかわらず、自身の最大の武器である合理性を手放すことを決意する。論理の限界にぶつかったIQプレイヤーは、何を考え、どう行動したのか。ゲームをとおしてたどりついた、新しい勝利の方程式。
本書のポイント
eスポーツの世界でスーパースターの座に登り詰めたプロゲーマー・ときど氏。本書では、変わった経歴を持った著者のときど氏が、「東大を出てまで、なぜプロゲーマーになったのか」という問いに答えるとともに、その変わった人生の中で得た教訓を示してくれている。次からは、私が個人的に本書のポイントと思う部分を、章ごとに少しずつ紹介していくこととする。私なりにまとめたりしているので、本書と表現が異なる部分もあるが、ご容赦願いたい。
序章
勝者が食い物にされる世界
勝負の世界では、自分が途方もない時間をかけて技を磨き上げようと、相手の力量如何ではまったく通用しないことがある。そこで必要なのが、対戦相手の過去の試合を研究し、その相手にふさわしい戦略を立てること。ここで注目するのは相手の「クセ」である。自分がこう動いたとき、相手はこう動く等の法則性がないか、クセを探し、分析する。分析対象としては、自分が勝った試合よりも負けた試合の方が向いている。相手は勝った時の経験から、同じような戦い方をすることが多いからである。つまり、勝者こそ研究されやすく、食い物にされやすいのである。
第2章
ゲームも真剣にやると力になる
人が成長するために必要なのは、何をするかではなく、することは何でもいいから、「それにどれだけ真剣に取り組むか」である。真剣に取り組めば、人はどんなことからも学べる。ゲームも例外ではなく、勝負事であるゲームの世界でトップに立とうと思ったら、頂点に立つためには何が必要か、何ができるかを真剣に考えなければならない。何かに真剣に取り組むと、どんなことであっても、成功するための「型」のようなものが身につき、これが実は、まったく別のことに生かせる「応用力」のタネとなる。著者の場合は、ゲームを真剣に取り組むことによって、勝つためにはそれぞれの相手や状況に対する「対策」の大切さに気付き、そのことが東大に合格するための過去問研究に繋がっている。
ゲームに学んだこと②~最短距離で成果をつかむために~
成果をつかむためには、「この状況で、このようにすれば勝てる」という細かい知識を積み上げていくことが重要となる。たしかに、細かい知識を積み上げないままに、もっと大味な「流れ」を重視して高い勝率を上げている「センスがある」プレイヤーもいるが、彼らの活躍期間はえてして短いものになる。大まかな戦い方だけを頼りにしていると、対策を練られた際、代わりとなる戦い方を発見する術をもたない彼らはプレイも雑になり、勝てなくなるのである。最前線で勝ち続けるには、ひとつの戦い方に拘泥せず、新しい戦い方を発見するために細かいデータを積み重ねていく必要があるのである。
情熱についての考察
成果を残せる人間と残せない人間を分けるのは、情熱の有無や情熱の熱量の大小である。情熱がなければ、時間もかけられないし、集中もできないし、試行錯誤も生まれない。何かを生み出すような真剣さは、ひとえに情熱から生まれるのである。さらに、情熱を持って事にあたっていると、その情熱は人に伝染し、情熱を持った者どうしが集まり、相乗効果で渦となって大きなエネルギーを生む。また、人に伝わるほど大きな情熱があれば、困ったときにも必ず救いの手が差し伸べられる。応援者が現れる。このようにして、情熱は大きな成果につながっていくのである。
第4章
面白さと強さの関係
セオリーから外れない80点のプレーは、マニュアル化されやすく、真似しようと思ったら真似しやすい。早めに80点のプレーを身につければ、最初のうちは効率的に一定の成果を上げられるが、人が真似できないものを強さの根源に据えないと、いずれ勝てなくなる。人が真似できない強さとは、セオリーからは生まれない、「面白い戦い方」から生まれる。
相手は「人間」
レベルが上がれば上がるほど、セオリーだけで通用するような、定型的なものからは逸脱していく。人間対人間の勝負事であるから、対戦相手の特性を理解する必要があり、その要素が大きくなるほど、より複雑で、より予測のつかないものになっていく。
進化の誓い
合理性や効率は大切なものであるが、それだけでは勝てない。勝つことに集中し過ぎて、楽しむことを忘れてはいけない。楽しいときが一番伸びる。楽しんだり魅せる情熱や闘争心は、合理性や効率を凌駕し得るのである。
終章
ライバルに手の内を明かす理由
強くなりたいなら、ライバルであっても手の内をさらし、知識を共有し、切磋琢磨すべきである。意見を交換しながらプレーの良し悪しを検証すると、伸び具合がまるで違ってくる。仲間と競い合い、高め合う習慣のない人間には新しい発見が少なく、その習慣のある人間には勝てないのである。
「いい人」だけが強くなれる
他人のアドバイスに素直に耳を傾け、新しい知識を吸収するための扉を閉ざさずにいられる選手は強い。どんな相手でも、たとえ相手の実力が自分より低い場合でも、そこから得るものはある。アドバイスとまでいかなくても、会話のキャッチボールの中で、ふとした発見が出てくることもある。しかし、人間は年齢やキャリアを重ねると、自分の成功体験に縛られ、特に自分の経験を否定するような新しい知識は、受け付けなくなっていく傾向が強い。そして、新しい知識を受け付けなくなったとき、成長は止まるのである。
情熱は論理を凌駕する
人生は1度きり。情熱がないフリ、好きなものがないフリはしない方が良い。10年後、後悔しても遅い。どんなことでも、論理よりも情熱で勝負してみたら、案外うまくいくことがあるはずである。もし、自分の中に情熱を見つけられない場合には、既に情熱を持っている人のそばに行ってみると良い。きっと彼らは、情熱のある人生とはどういうものかを教えてくれる。そして、あなたに情熱の火をつけてくれる。情熱の炎は聖火リレーのようなもので、世代を超え、ジャンルを超えて、人の心に伝播していくものなのである。
まとめ
私はプロゲーマー・梅原大吾氏の著書を読んで感銘を受け、eスポーツの世界に興味を持って、今回ときど氏の本書を手に取った。ここまで個人的に気になったいくつかの部分をまとめてきたが、梅原大吾氏の著書同様に、様々な世界で参考になる内容である。「何をするかではなく、どれだけ真剣に取り組むか」「情熱は論理を凌駕する」本書を読み、そして浅い経験ながらも、自分の人生経験と照らし合わせ、本当にそうだと思う。ぜひ多くの方に読んでいただきたい本である。