『勝ち続ける意志力』
本書の紹介
【基本情報】
題名:勝ち続ける意志力
著者:梅原大吾
頁数:256p
出版社:小学館
発売日:2012/4/7
【概要】※「Google Books」より
ゲームファンから「神」と崇められ、「世界一長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネスブックに認定されている伝説のゲーマー・梅原大吾が、初めて熱い想いを語る。「小学生からゲームが好きだった僕は、勉強も部活もしてこなかった。だからこそ、ゲームを通して自分を成長させるのだ」との強い意志のもと、歳で強豪を破って世界大会優勝。その後、一度ゲームを辞めた時の挫折感、そして復活、再び世界一になり、プロ契約、ギネス認定に至るまでのウメハラの全貌がここに明かされる。ウメハラは「たかがゲーム」という世間の冷たい視線に耐え、「どうすれば自分を向上させることができるのか」を常に考え抜いてきた。「楽な勝ち方ばかりしていてはやがて勝てなくなる」「変化なくして成長なし」「最もライバルが多いゲームをあえて選ぶ」など、彼がこれまで実践してきた、勝ち続けるための勝負哲学は、ゲームの世界のみならず、いまの社会を強く生き抜くための指針でもある。ウメハラ渾身の作である本書は、ゲームの攻略本ではなく、人生の攻略本である。
本書のポイント
本書では、梅原大吾氏の生き方や、勝負事で勝つ方法、勝つための努力の仕方、勝てるようになるまでの過程などが、プロローグ、1~5章、エピローグに分けて語られている。今回は、その中でもお気に入りである2~4章およびエピローグの内容について、少しずつポイントを確認していきたいと思う。
第2章
勝ち続ける人、負ける人
勝ち続けるには、勝敗を決するプラスの要素とマイナスの要素見つけ、その両方を分析して努力を続ける必要がある。その努力を怠り、自分の才能に頼るとか、ひとつの勝ち方にこだわるような人は必ず壁にぶつかり、その壁に対応できずにそのまま落ちていく。勝負の本質は、自分の好みやスタイルとは関係なく、相手にとってどうなのか。勝つために最善の行動は何かを探り当てることができ、それを実行できるかどうかである。より新しくかつ良いものを生み出し続ける姿勢を大事にして、戦術や戦略を重視した応用力が身につけば、スピードや反射神経をカバーでき、年齢は怖くなくなる。自分の得意なものを捨ててでも、いかに勝つか、どんな状況でも勝てる方法を探るべきである。
迷う力
ただ大会で勝ちたいだけの人間は、そのゲームを心から愛して細かい積み重ねをしてきた人間、そのゲームに懸けている人間には到底勝つことはできない。何度もミスを犯し、失敗し、そのたびに深く考え抜いてきた、迷ってきた量が圧倒的に違うからである。迷った量の少ない人間は、究極の勝負の場面で自信を持って前に出ることができず、勝負弱いのである。
変化なくして成長なし
多くの人にとって変わることは不安なことである。変化した先に勝利があるとは限らない。失敗することも数多くある。しかし、少しずつでも変わり続けていれば必ず前へ進める。変化したことで1歩後退しても、その後退に学んでからもう一度変化することによって2歩進む方法が見えてきて、以前の自分よりも必ず高い位置にいける。成長というのは、同じ場所にいないことで促進される。失敗ばかり恐れ、何もしないというのが一番いけない。とにかく大事なのは、日々変わろうと意識し、自分の少しの変化を見逃さず、変わり続けることである。
「気になること」をメモする
対戦中や練習中に、ほんの少しの気掛かりが芽生えることがあるが、その気掛かりをそのまま放置してはいけない。必ずなるべく早く携帯等にメモし、忘れずに解決しないと、後から問題になったり痛い目に遭ったりする。
考えることをやめない
勝ち続けるためには、ひとつの問題に対して深く考えなければならない。勝てない人は鳥を見て「鳥は飛べるんだ」と思うだけである(何かがすごい人に「すごいな」と思うだけ)。なぜできるのか、まで考えない。考え続ければ必ず気づきがあり、自分なりの答えに行き当たる。その答えが正解かどうかは重要ではなくて、自分自身で考え抜き、何かしらの答えや新たな考えを見つけること自体が大事なことである。普段からその癖をつけておくと、何か壁にぶつかった時に自分の力で乗り越えていくことができる。
第3章
麻雀に学んだこと
何かを身につけたいと思うのであれば、丁寧に、慎重に、基本を学ぶべきである。下手なうちから独自の取り組み方をしたり、自由に伸び伸び練習したりすると、最終的に底の浅い仕上がりになってしまう。また、逆にセオリックなものだけでは、辿り着いても10の強さしか手に入らない。11、12、13の強さを手に入れるには、例えば、ミスをしないようにコースを攻めるのではなく、コースをはみ出すくらいのスピードを出してみる。言い換えれば、直感に従うような戦いをしてみることが必要である。10の壁を超えられない人は、自分に自信が持てず、自分の判断に身を委ねるのが怖いからどうしてもセオリーに頼ってしまい、他を圧倒するような強さは発揮できない。基礎や基本を身につけたうえで、殻を破る勇気を持ち、自分なりの色を出せるようになれば一気に成績は伸びる。
型を超えたときの強さ
勝ちたい一心で勝負をしていると、自分の感性が錆び始め、この行動以外はあり得ないと型にはまり、つまらないアイデアしか浮かばずに動きの幅が狭まってしまう。失敗を避け、有名になりたい、目立ちたい、誰かに認めてもらいたいと願う欲望が、自分自信を萎縮させてしまう。11以上の強さに到達するには、型を超えなければならない。
第4章
自分を痛めつけるだけの努力はしてはいけない
ただガムシャラに時間を割いたり数をこなしたりするのは、自分を痛めつけるだけである。自分を痛めつけていると努力しているような気になるが、そんな間違った努力からは痛みと傷以外の何も生まれない。結局、大切なのは質であって量ではないということである。そして、努力の質を高めていくためには(体調管理ができていることを前提として)頭を使って考える必要がある。短くてもいいからそれを継続し、そのなかに変化や成長を見出すことである。頭を使って考えることは苦しいことだが、問題に対して多角的に考えればきっと見えてくるものがある。考える苦しさを放棄してガムシャラになることは、間違った努力であると同時に、むしろ楽をしているとさえ言えるのである。
無理をし続けて
すごく苦しいことを我慢して努力する、そういう無理し続ける人生が格好いい、そんな人生を送っている人が偉いと思っていたが、そんな人生は疲れるだけだと気付いた。無理をせず、背伸びもせず、毎日毎日、自分にできる範囲の精一杯を繰り返していく。自分を変化させることを怠らず、小さくてもその変化を心から楽しみ、毎日少しずつ成長して、一日一日を味わい深く噛み締める。その結果、自然に賞賛を受ける方が、無理がないし継続できる。
目標と目的の違い
大会というのは、日々の練習を楽しんでいる人間、自分の成長を追求している人間が、(自身の成長の)お披露目の感覚で出るものである。人間は目標があるから頑張れるため、大会における勝利は目標のひとつとしてはいいかもしれないが、(最終)目的であってはいけない。大会における勝利を目的とすると、負けたくないとビクビクしてしまい、相手に強気でぶつかられるとそれを跳ね返すだけの気持ちの強さが持てない。動きが慎重で固くなり、セオリーに頼り過ぎる傾向がある。セオリーというのはあくまでベースであり、それだけで勝てるものではないため、結果はついてこない。大会はあくまで目標のひとつにすぎず、日々の自身の成長を目的とすべきである。自身の成長に目を向けることが、「勝ち続ける」ことにつながってくる。
継続のためのサイクルを作る
人間は(日々の成長を目的としていても)大会という目標があれば、「大会まで2か月あるから、今日は頑張らなくていい」と、簡単に毎日の努力を放棄してしまう。日々の成長を目的とする者にとって、甘えること、サボることはもっとも避けなくてはいけないことである。よって、継続できるサイクルを作ることが大事である。継続できるサイクルかどうかを考えるとき、「そのサイクルは10年続けられるか?」と自問自答するといい。10年続けられる努力であれば、甘過ぎることなく、厳し過ぎることもない適量の努力と言える。
サイクルの縛りはほどほどに
日々のサイクルは作るが、そのサイクルに縛られてしまうのは良くない。例えば、人付き合いをすべて断ってまでサイクルを守る必要はない。人付き合いから学べること、自分と一切関係ないジャンルに生きる人から学べることは多い。先生はどこにでもいる。自分自身に学ぼうとする意欲がある限り、どんな人、どんな本、どんな言葉からでも学びを得ることができる。
エピローグ
若い強さから学ぶこと
若いプレイヤーと経験のあるプレイヤーの差は「素直さ」である。若いプレイヤーは素直で純粋だから、既成概念も固定観念も薄く、疑いがないから決断にも迷いが生じないため伸びていける。年齢や経験を重ねるほど、以前はこうだった、これが常識だ、などといった既成概念に縛られ、偏見や固定観念を捨てられなくなる。台頭する若者に勝利するには、素直に純粋に楽しみ、学ぶ姿勢を持続する必要がある。新しいものを否定しないこと、新しいものから素直に学ぶ姿勢を忘れないことが重要である。
生きることは
生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることである。成長を諦めて惰性で過ごす姿は、生きているとはいえ生き生きしているとは言えない。常にチャレンジして、たくさん失敗すればいい。たくさん失敗すれば、トライ&エラーが当たり前の習慣になり、失敗することを恐れない人間になる。もちろん進んで失敗する必要はないが、失敗から学べることや、失敗からしか学べないこともある。一番良くないのは、失敗を恐れて迷っている状態が延々と続くことである。迷っているだけの人間よりも、失敗するかもしれないけどトライする人間の方がはるかに上達が早い。勇気を出して積極的にトライした者だけにしか得られないことが、絶対にある。
まとめ
この本は、プロゲーマーという特殊な世界で活躍する梅原大吾氏の経験に基づいた内容ではあるが、勝つため、勝ち続けるための努力や思考法は、他の分野でも大いに役立つものとなっている。私もこの本と出会って以降、自身が情熱を注ぐテニスに対する向き合い方が変わった経験をしており、周囲にもおすすめしてきた一冊である。読んで損はないので、少しでも興味が持てれば、ぜひ読んでいただきたい。